参考文献として、肉体改造のピラミッド栄養編から抜粋させていただきます。
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サプリメントを摂る目的
まずはじめにサプリメントを摂る目的についてはっきりさせておきましょう。
サプリメントを摂る目的には大きく分けて2つあります。
・健康を維持するために、必要最低限の栄養素を確保するため
・特定の栄養素を通常よりも多く摂って、さらなる効果を得るため
この2つの場面がほとんどでしょう。しかし
サプリメントが必ずしも「必要」と考えるべき状況は多くありません。
特別な症状があって、特定の栄養素を確保しなければいけないような場合に限られます。
また、実際のところ、サプリメント全般に関して言えることですが
「お金がかかるばかりで、何のメリットもない」という製品が大多数です。
ただ一部にはしっかりした科学的裏付けもあって、僅かながら効果が期待できる物もあります。
その中で自分に必要なサプリメントを判断するには、自分自身の目標を達成するには
何が必要かを考え、その上で科学的裏付けのあるサプリメントを選ぶ必要があります。
今回は後者の、さらなる効果を得てパフォーマンス向上につながるサプリについてご紹介していきます。
サプリメントのレベル
ここでは
・科学的に効果が確認されているか
・効果がある場合は多くの人にとって意味のあるものか
によってサプリメントのレベルをA~Cの3つに分類していきます。
レベルA
トレーニングをする多くの人にとって有用な効果があるサプリメントで、
かつ研究でも十分に効果が確認されているものです。
レベルB
特定の状況でのみ、摂る意味のあるサプリメントや、研究で確認された結果は
賛否が分かれていたり、さらなる研究が必要な段階ではあるものの、
全体としてポジティブな結果が得られているサプリメントです。
レベルC
一般的に人気ではあるものの、実際には摂る意味のないサプリメントです。
(ここに記載のないサプリメントも基本的には全てレベルCだと考えて下さい)
クレアチン(レベルA)
クレアチンはトレーニングを行う際のエネルギー源として使われる物質です。
クレアチンは動物性の食品から摂ることができ、特に生肉に多く含まれます。
また、グリシン、メチオニン、アルギニンといったアミノ酸から体内でも作られます。
ただ、肉を加熱するとクレアチンは分解されてしまうので、
パフォーマンスを伸ばす効果を得るためにはクレアチンをサプリで摂ることが効果的です。
クレアチンは色んな種類が商品化されていますが、「クレアチンモノハイドレート」と
呼ばれるタイプが1番安価でベーシックかつ、最も効果が実証されています。
他の種類のクレアチンは、効果が劣るか、効果は変わらず値段だけが高くなります。
ここで説明するクレアチンは「クレアチンモノハイドレート」の事を指しています。
体内に蓄えられたクレアチンの量を高めることで筋力や筋パワーが向上したり、
長いスパンで見ると筋量を伸ばしやすくなったりする効果が期待できます。
1日に2〜4g程度(体重kg×0.04g)が摂取量の目安になります。
この摂取量で体内に十分なクレアチンを蓄えられるまで、2週間程度かかります。
その後もこの摂取量を続けることで、体内のクレアチンの量を保つことが出来ます。
クレアチンには様々な摂取方法がありますが、長いスパンで考えると
どういう摂り方をするかは、さほど重要ではありません。
トレーニング前に摂るか、後に摂るか、炭水化物と一緒に摂るか、
ローディング期間を設けるか、といったことにこだわる必要はありません。
こういった細かい摂り方で違いが出るのは、最初の2週間だけ。
体内のクレアチンの量を増やすのに、5日かかるか、21日かかるか、といったことは
長いスパンで見ると、意味のある違いにはなりません。
クレアチンを摂取量の目安を続けて摂っていれば、クレアチンで得られる効果は全て得られます。
・ここからは減量中にクレアチンを摂り始める場合
クレアチンを摂り始めると、体内の水分量が多くなります。
体重が水分量の変化の影響を受けないように、最初だけ摂取量を増やします。
1日20g程度の摂取量を1週間ほど続け、その後は1日2〜4gに戻します。
その戻した初日の体重を基準として、減量の経過観察を行うと、水分量に惑わされなくなります。
カフェイン(レベルA)
カフェインは覚醒作用のある物質で、飲み物から摂るだけでなく、サプリとしても販売されています。
カフェインにはパフォーマンスを伸ばす効果と疲労感を抑える効果があり、
一般的にプリワークアウトサプリメントと呼ばれるタイプの製品に含まれています。
プリワークアウトサプリにはカフェインと他の成分が組み合わさった物がほとんどです。
このサプリの効果の大部分がカフェインによるものなので、他の成分は意味がない訳ではないですが、
カフェインほどエビデンス(科学的根拠)のしっかりした物はありません。
カフェインには疲労感を抑えたり、トレーニングのパフォーマンス向上の効果は証明されていますが、
体脂肪を減らす効果は明確には証明されていません。
カフェインと摂ると目が覚めるような感覚があります。(目ざまし代わりに使う)
しかしカフェインと摂り続けると、その感覚が鈍くなってくる方もおられると思います。
これは「耐性」と呼ばれ、カフェインを長く摂り続けると、効果が弱くなる事があります。
このことはカフェインを摂り方を考える上で重要になってきます。
「耐性」に注意をしながらの、カフェインの効果的な摂り方を2通りご紹介します。
・疲労感を抑える場合
1日に体重1kg×1〜3mgが目安になります。
この疲労感を抑えるやり方では、「耐性」による効果の影響は受けませんのでご安心を。
・パフォーマンスの向上の場合
1日に体重1kg×4〜6mgが目安になります。
トレーニングの60分前に摂ります。
このパフォーマンスを上げる摂り方は、耐性によって効果が弱まってしまう場合があります。
日常的にカフェインを摂っていると、耐性は簡単に形成されてしまうので、摂る量と頻度に注意しましょう!
摂取量は1日体重1kg×1mgまで、頻度は1週間に2回までにすると良いでしょう。
・その他に運動中の痛みを抑える、筋収縮の出力向上の効果もあり、これらは耐性の効果を受けません。
ベータアラニン(レベルB)
ここからはレベルBのサプリメントです。
特定の状況でのみ効果を期待できるものや、まだ研究で効果を十分に確認されたと言えないものを紹介します。
ベータアラニンは筋持久力を高める効果があります。
クレアチンが筋パワー、筋力、筋肥大といった目的に適しているのに対して、
ベータアラニンは比較的長い時間をかけて行う有酸素系パフォーマンスに効果があります。
こういう特徴を踏まえて、ベータアラニンが有効だと考えられる場面は
・1セットあたり15〜20レップ以上の高回数設定が中心になる場合。
・ウェイトトレーニングに加えて持久系の運動を行う場合。(クロスフィットなど)
・60秒以上継続する運動を行う場合。
こういった条件に当てはまる場合、1日3〜4gを目安に摂ると良いでしょう。
シトルリンマレート(レベルB)
シトルリンマレートはシトルリンとマレートという2つの成分を合わせたサプリメントです。
シトルリンは血管を拡張させる働きがあり、運動中の筋肉への血流を促し、パフォーマンス向上につながる可能性があります。
また、運動中に体内で生まれるアンモニアの処理を促し疲労を抑制する可能性も考えられます。
マレートは運動中のエネルギー産生を高め、乳酸の産生を抑える効果があります。
こういったシトルリンとマレートの特徴を組み合わせることでエネルギー産生と老廃物の除去を促す効果が期待できます。
こういったメカニズムから、シトルリンマレートを摂るとセット中の筋持久力やセット間の回復が向上し、
こなせるトレーニング量を伸ばせるのではないかと考えられています。
しかし、研究では何も効果が見られなかったものと、効果が得られたとする研究が入り混ざっています。
効果が得られた研究では、トレーニングの60分前に8gを摂るという条件だったようです。
現時点ではこの摂り方がベストだと結論づけることは出来ないわけですが、参考にするのは良いかも知れません。
グルタミン(レベルC)
ここからはレベルCのサプリメントになります。
ここに紹介されているものはオススメはしておりません。
グルタミンは体内に最も豊富にあるアミノ酸です。
通常グルタミンは体内で合成することが出来るので、非必須アミノ酸とされています。
ただ、特殊な状況(手術の後、火傷を負った場合、疾患のある場合など)では
合成よりも分解が進んでしまうことがあり、外から摂取するのが有効になる場合があります。
実際に医療の現場では、患者に注射でグルタミンを投与することがあり、
感染症の減少、回復の促進、死亡率の低下、入院期間の短縮といった効果が確認されています。
しかし、グルタミンを注射するような医療系の研究で示されたことを根拠にして、
パウダー状の飲むサプリメントに同じ効果を期待するのは無理があります。
今現在、グルタミンがパフォーマンスや体組織の改善につながるとする科学的知見はありません。
強いて使い道を挙げると、コンテストに向けた減量期間のようにストレスのかかる状況で
グルタミンを摂ることで胃腸の健康を保ちやすくなる可能性はあるのかも知れません。
しかし、これも理論的に可能性が考えられるという程度で、確実に効果が期待できるものではありません。
BCAA(レベルC)
BCAAはバリン、ロイシン、イソロイシンという3つの必須アミノ酸の事で、
たんぱく質となる食品から摂ることが出来ます。
減量中か、増量中に関わらず、たんぱく質をたくさん摂っていれば、BCAAを摂っても特にメリットはないでしょう。
体重×2g程度のたんぱく質を摂れていれば、BCAAも十分に食事から得ることができます。
特にボディメイクの世界ではBCAAは人気のサプリメントですが、BCAAに関する科学的知見は限られており、
BCAAの摂取を勧めるのに十分な根拠があるとは言いにくいのが実情です。
筋ダメージを和らげるという意味では、BCAAは何も摂らないよりは良いものの、
普通にたんぱく質を摂る場合より優れているとは言えないところです。
筋力トレーニングのパフォーマンス向上を目的とする場合、普段の食事から、カロリー、たんぱく質、炭水化物が
十分に摂れていればBCAAを摂って何かメリットを得られる可能性は少ないと言えます。
減量中のカロリーや炭水化物を十分に摂れない場合や、完全な空腹状態で有酸素運動を行うときに
BCAAを摂る意味はあるかもしれませんが、運動前にホエイプロテインを1杯摂れば
安価で同じ効果を得られると考えることもできます。
最後に、BCAAは商品パッケージには記載されていないことが多いですが、BCAAにはカロリーがあります。
多くの国や地域において、BCAAのようなアミノ酸単体の状態のものにはカロリーがあると表記できないことになっています。
実際には、BCAAにもホエイプロテインと同程度のカロリーが含まれ、どちらも摂取すると素早く吸収されます。
ホエイプロテインには、BCAAの他に筋肉を作るのに役立つ必須アミノ酸が全て含まれているので、
理論上はBCAAより、ホエイプロテインを摂るほうが良いはずだと考えることは出来ます。
HMB(レベルC)
HMBはロイシンが体内で代謝される過程で生まれる物質です。
筋たんぱくが分解されるのを抑制して筋肉を増やしたり、
トレーニングのパフォーマンスを向上させる効果があるとして研究されていました。
2007年までの研究をまとめた論文では、トレーニング経験のない人には筋力を伸ばす小さな効果が
見られるものの、トレーニング経験のある人では効果が認められず、体組織に関しては
トレーニング経験に関係なく、ごくわずかな効果が見られるにとどまると結論付けられました。
ただし、トレーニングを適切に行えていれば、最初の数ヶ月を過ぎると筋ダメージが
大きな問題になることはなく、回復の為にHMBを必要とするような状況は起こらないはずです。
2018年には過去の研究をまとめた新しい論文が発表されましたが、ここでは
トレーニング経験者はHMBを摂ってもパフォーマンスにも体組織にも効果がないと報告されています。
まとめ
ここまでパフォーマンス向上につながるサプリメントを紹介してきましたが、
本当に必要なサプリメントを判断するために
・そのサプリメントは本当に効果があるのか?
・そのサプリメントの効果は自分の目標達成に有効なのか?
この2点を判断基準として、選んでいただければ良いと思います。
今回も参考になったなら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました☆
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